トレンド・チャンネル(Trend channel)
トレンド・チャンネル(または単にチャンネル)とは、相場が二本の平行線に挟まれた領域の中をあたかも誘導されるように進行する、その道筋を指す。つまり、同じ傾斜角を持った二本のトレンド・ラインに沿ってマーケットが動くのである。もちろんトレンド・ラインと同様に相場のトレンドが出来始める段階でトレンド・チャンネルを確定させることは難しい。ある程度の期間が経過した後にトレンド・チャンネルが形成されつつあることに気づくケースがほとんどだ。
トレンド・チャンネルの存在を知ったとき、過去の相場進行を決定づける際にそれがいかに有効に機能したかが分かれば、将来の相場展開がこのチャンネルに従うと期待してもあながち的外れではなかろう。しかし、相場が型どおりに動くのは実はあまり「面白くない」。市場参加者の最大の関心は、マーケットがトレンド・チャンネルからはみ出す可能性を見極めることにある。
左図はなだらかなトレンド・チャンネルがブレイクされ、相場上昇に一段と弾みがついた様子を示している。それまでマーケットが繰り返した上下動とは明らかにリズムの異なる動きが出ている。市場参加者がチャンネル・ブレイクを契機により強い行動に出た結果がグラフ上に現れたのだ。上のモデルでは相場がこのあと新たなトレンド・チャンネルを形成しているが、実際の相場でもしばしば観察される現象である。
左図は 1987年 9月から翌年 2月にかけてのドル・円相場。147円台から 120円台までドルが下落する過程でトレンド・チャンネルが観察できる。相場が天井を打って下げ始めた段階ではまだチャンネルは確定していない。相場が一連の流れの半ばを過ぎた段階(後から分かるのだが)、Bの時点でようやく効果的なトレンド・チャンネルを描くことができた。まず、AとBを結ぶ直線を引く。次にこの直線に平行しCを通るもう一本の直線を描く。これでチャンネルの完成である。その後このチャンネルの下値支持線が相場の下落を 120円台で食い止めた(D)ことからその有効性が確認できよう。しかし、その二日後には猛烈な勢いで相場が反転上昇、上値抵抗線を切ってしまった。マーケットの流れがトレンド・チャンネルから外れてしまったことで、あとに続く相場つきがそれまでとはガラリと変わったことがよく分かろう。
上図は 1997年 5月下旬から約 11ヶ月に及ぶ長いトレンド・チャンネル。途中、紆余曲折を経ながらも概ねチャンネルの中に収まっている様子が見て取れる。1997年 11月にマーケットが上昇を加速、上値抵抗線近辺でもみ合ったのちチャンネルを抜けそれまでとは違うトレンド・チャンネルを形作っている。しかし、新しいチャンネルは長続きせず、結局相場はその下値抵抗線が破られたのを合図に元のトレンド・チャンネルに戻ってしまった。勢いに乗りさらに下値支持線をもブレイクしかかったが、これはいわゆるチャートの「だまし」に終わっている。その後相場は何事もなかったかの如く元の鞘に帰った。本来ならば赤の点線丸印の段階で売りに拍車が掛かってもおかしくないのだが、そうはならなかったところに一種テクニカル分析の限界を感じるが、同時に「だまし」があるからこそ相場は難しく面白いのであろう。
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