一目均衡表
ペンネーム、一目山人氏が考案した、日本を代表するチャート分析手法。まだコンピュータのなかった昭和初期に多くの人手をかけて開発された。今や海外でも効果的なチャート分析手法として広く知れ渡るところとなり、相場を手がけるひとにとって必須のツールといっても過言ではない。
各線の算出方法
一目均衡表を構成する五つの線の算出方法は以下のとおり。
とすると、当日の転換線は
で求められる。同様にして
とすると、当日の基準線は
となる。
当日の終値を(当日を含む)26日前に遡って記録したものが遅行スパン。当日の転換線と当日の基準線を足して2で割ったもの、つまり
を、当日を含む 26日先に記録したものが先行スパン1である。
先行スパン2は
で求められる。先行スパン1、2ともに当日を含む 26日先に記録すればよい。
H(52)は当日を含む過去 52日間の高値。L(52)は同期間内の安値を表している。
(上記説明の中で例えば当日を含む 26日先とは、一目均衡表では当日を第1番目の日として数えるので当日から俗にいう 25日後の日に当たる)
レジスタンスとサポート
実際の相場(ローソク足)の位置関係によって一目均衡表を構成する各線(遅行スパンを除く)自身がレジスタンスやサポートとなり得る。例えば、相場が転換線より上で推移しているときに相場の下押しを食い止めるサポートとして機能する。或いは、相場が転換線より下にあるときに反発を押さえるレジスタンスの役割を果たす。特に相場に持続的なトレンドが現われるケースで顕著に見られる(図−1)。基準線に関しては、この線自体をレジスタンスやサポートとして捉えるよりは、その傾きから判断して相場の中期的な趨勢を占う指標として見たほうが良いようだ。
二つの先行スパンは相場の重要なポイントとして市場参加者が強い関心を示す傾向がある。先行スパンに挟まれた領域は「雲」と呼ばれ、雲の淵−つまり、先行スパン−が実際の相場において重要なチャート・ポイントなったケースはしばしば観察される。短期プレーヤーにとっては見逃せない、大切な要素である。図−2に注目。雲の上限が見事に相場を支えている様子が見て取れる。
これ以外には、現在進行している相場が 26日前のローソク足が位置する水準で抵抗を受けるという意味で、過去のローソク足自身がレジスタンスやサポートになる。図−3では遅行スパンがローソク足の抵抗を受けて下に押しやられた(赤の矢印)。
相場の騰落判断
例えば下落局面において相場が下降トレンドに突入したと判断するのは次のような現象が観察されるときだ。
上記、1から4の条件が数多く揃えば揃うほど、テクニカル的に強いシグナルを発することになり、欠ける条件が増えるほどシグナルとしては弱いとみなす。上記のうち、ローソク足が雲を抜くかどうかを必要以上に重要視しがちだが、現実には基準線や遅行スパンの動向により注目する必要がある。図−3のドル・円相場は1から4の条件をすべて満たした理想的な局面で、ドルの中期的な大幅安を招いた。
図−4は 1990年 4月下旬から 8月中旬にかけてのドル・円相場。■で示した部分に注目。149円近辺で一旦底を打った相場が反転上昇しながら転換線、基準線を上抜いた。やや遅れて転換線と基準線がクロスした(2)あと、6月20日の終値時点で遅行スパンもローソク足を上抜いてきた(1)。ところがこの間、基準線は下がったままで上昇に転じていない。つまり、149円近辺からのドル上昇が中期的なトレンドとして確立された裏付けが取れず、一時的な綾戻しである可能性を暗示していた。案の定、瞬間的に雲を抜いたかに見えた相場は156円近くで天井を打ち(3)、これ以降、ドルは大幅に値を下げる結果となった。上記の条件がすべては揃わなかったために相場のトレンド形成に失敗した例である。
タイム・サイクルと波動
一目均衡表は上述したような、チャートを織り成す各構成要素だけがこのチャート分析手法を特徴づけているのではない。その他にも相場のサイクル的な捉え方や、エリオット波動理論に少し似てはいるが、相場の変動を波動とみなしてそのターゲットを求める方法などがあって、これらを用いて総合的に相場を分析しなければならないとされている。これらの解説に関しては「一目均衡表の研究」(投資レーダー、佐々木英信氏著)が詳しい。ここで解説を載せてもほとんど受け売りになってしまうので、より深く研究したい方にはこの著書を読むことをお勧めする。